訪問介護の赤字42.8％　黒字の秘訣は短時間介護

2022年度、福祉医療機構（WAM）が発表した訪問介護事業所の経営状況に関する調査結果では、42.8％の事業所が赤字であることが明らかになり、前年度よりも2.7ポイント増加しました。一方で、黒字を維持している事業所は短時間の身体介護サービスの増加によって収益改善に成功しており、この方法が今後の介護事業の収益化における重要なポイントとして注目されています。

▼訪問介護の赤字事業所割合とサービス活動増減差額比率

参考資料：「訪問介護の赤字事業所割合とサービス活動増減差額比率」（WAM_2022年度 訪問介護の経営状況より）

グラフからもわかるように、赤字事業所の割合は一定数存在し、事業の持続可能性が問われています。特にサービス活動増減差額比率の推移を見ても、経営状況の改善には明確な戦略が求められることがわかります。

2022年度の訪問介護事業所の経営状況

参考資料：「2022年度 黒字・赤字別の経営状況」（WAM_2022年度 訪問介護の経営状況より）

このように、42.8％の訪問介護事業所が赤字となっており、前年度比で2.7ポイントの増加が確認されています。これは、業界全体で経営環境がさらに厳しくなっていることを示しています。

訪問介護事業所の赤字率増加の背景

赤字の主な原因

赤字の背景には、以下の要因が考えられます。

 人件費の上昇と人材不足

• 求人・採用コストの増加: 介護職員の確保が難しく、求人広告費や紹介手数料が増大

• 賃金の引き上げが必要: 人手不足が深刻化し、給与を上げなければ職員の確保が困難

• 一人当たりの負担増加:採用が難しく、職員1人あたりの業務負担が増加

• 負担増により離職率が上昇 → さらに人手不足が悪化

介護報酬改定の影響

• 介護報酬単価の引き下げ: サービス提供による収益が減少し、経営が苦しくなる
• 厳しいサービス提供条件:
  • 国の基準変更により、報酬を得るための条件が厳格化
  • 効率的な運営が難しくなり、利益確保が困難に

利用者数の減少と競争の激化

• 要介護者の減少（地域差あり）: 一部地域では高齢者人口が減少し、利用者確保が難しくなっている
• 事業所間の競争激化:

• 訪問介護サービスを提供する事業所が増加
• 利用者の奪い合いが発生し、安定した収益確保が難しくなる

経営課題の発生と対策の必要性

収益確保が事業継続のカギ: 赤字が続けば、事業の存続が危うくなる

経営戦略の見直しが必要

• 短時間サービスの活用や効率的な訪問計画の導入
• 新たな収益モデルの検討（自費サービスの導入など）

訪問介護事業者は、この厳しい経営環境に対応するため、経営戦略の見直しが求められています。

このような状況の中、いかにして経営を安定させるかが事業者にとって大きな課題となっています。

黒字事業者の特徴と成功要因

赤字事業者が増加する一方で、黒字を維持している事業者も存在します。黒字事業者の多くが取り入れているのが、短時間の身体介護サービスの活用です。

短時間身体介護とは、比較的短い時間（例：20分以上）で提供される介護サービスのことを指します。例えば、食事介助や排泄介助、着替えの補助などがこれに該当します。このサービスの活用によって、黒字事業者は以下のような収益改善を実現しています。

• 回数を増やすことで収益を確保：1回あたりの単価が低くても、提供回数を増やすことで全体の売上を伸ばせる。
• 職員の稼働率を高める：短時間のサービスはシフト調整がしやすく、職員の稼働率を向上できる。
• 移動時間の最適化：短時間の訪問を組み合わせることで、移動時間を短縮し、効率的なサービス提供が可能になる。

短時間身体介護のメリットと課題

短時間身体介護を活用することには多くのメリットがありますが、同時に課題も存在します。

メリット

• 事業所の収益が向上：回数を増やすことで売上を確保しやすくなる。
• 利用者にとっても柔軟なサービス提供が可能：必要な時間だけ利用できるため、費用負担を抑えながら介護を受けられる。
• 職員のスケジュール調整がしやすい：短時間の業務はシフト調整が容易で、働き方の選択肢が広がる。

課題

• 移動時間と負担の問題：短時間の訪問が増えると、職員の移動負担が大きくなる可能性がある。
• ケアの質の確保：時間が限られる中で、適切なサービスを提供する必要がある。
• 利用者の満足度の調整：短時間では十分なケアが提供できないと感じる利用者もいるため、説明や調整が重要となる。

このように、短時間身体介護は黒字化の有効な手段となり得る一方で、事業所ごとの工夫やマネジメントが求められることがわかります。

訪問介護事業の課題と今後の方向性

訪問介護業界の現状と課題

• 赤字事業者が増加し、経営環境が厳しくなっている
• 収益を確保するための対策が求められている
• 一方で、短時間身体介護を活用し、黒字化を実現している事業者も存在する

今後の訪問介護事業の方向性

• サービス提供の効率化と職員の働きやすさの両立が重要
• 介護報酬の改定や地域ごとのニーズ変化に対応する柔軟な経営戦略が求められる
• 事業所ごとの特色を活かし、持続可能な運営を目指すことが必要

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著者：田中恵理子＠ファミーユ採用マーケティング担当
介護現場・保育現場の経験、それに加えて、IT・SNSマーケティングについての関心が強く独学を続けてきました。ファミーユの良さを日々伝えていきたいと思っています。