「お局」を発生させない職場

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退職理由ランキング1位は「人間関係」

介護労働安定センターの調査によると 介護職の退職理由のトップは、「職場の人間関係に問題があったため」が28.3%(令和5年 訪問介護員)と最も高いとのこと。続いて「他に良い仕事・職場があったため」(同:22.7%)「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため 」(同:17.8%)と続きます。

同調査では、「職場の人間関係」の問題にそれ以上の考察はないので、経験と想像から私なりに考察をすると、それは、「退職をしてしまうぐらい、苦痛な人間が職場にいる」ということになると考えます。

通常、退職ー>転職というキャリアイベントは、自身のキャリアにとってどういう意味を持つのかを多少なりとも思考し、決断するものだと思っています。「職場の人間関係」は、誰しも入社をする時点で、大なり小なりのフリクション(摩擦)があることを予測し、職場を選んでいるはずです。また、実際に「職場の人間関係」が起きても、周囲や上司に相談し、その多くは解決されていくものです。それにも関わらず「人間関係」で決めてしまう程の存在がそこには存在したということだと思っています。

誤解されることを恐れずに断定してしまうと、それは「お局」という存在だと考えます。

「感情」「パワーバランス」「忖度」の職場のボス

「お局」という存在を定義するならば「感情的な理由で他人に責任転嫁し、職場で存在感を表現しようとする存在」だと思っています。なにか職場で「問題」が生じた際に、関与した人に対して「なんてことをしてくれたのか?」等、「感情」的な叱責、責任追及を行うのが「お局」です。そういった言動に真っ向から「その追及はよくない」と言い出せない職場の雰囲気があり、同様のことが重なっていくと組織にはインフォーマルな階級が出来上がっていきます(「パワーバランス」)。そして周囲も「あの人(「お局」)には、逆らわない方が良い」「今日の機嫌はどうかな?」といった「忖度」がはじまります。「感情」「パワーバランス」「忖度」で意思決定される職場には必ず「お局」が発生するとも言えると考えます。

一見、職場には緊張感が出て、作業効率や習得速度も上がったように見えます。マネジメントする立場の人が「お局」を職場コントロールの為に便利に使い始めるのです。ただ、そこに犠牲者がでます。特に「お局」に反対意見を言ったり、「感情」的な部分で嫌悪感を持たれた人は、排除されるまでターゲットにされます。「お局」は「だって嫌いなんだもん」と堂々と周囲に触れ回ることも躊躇しません。ターゲットになった人は、多くの場合理不尽に孤立無援となり、仕事が正常に行えない状態になり、退職へ至るのです。

この現象は、多くの職場で局地的に発生する現象で、「感情」「パワーバランス」「忖度」で意思決定をする風土を意図的に変えなければ、無くならない現象だと言えます。

「お局」を発生させない仕組み

反対に「感情」「パワーバランス」「忖度」で意思決定を行わない組織風土になれば、「お局」は発生しなくなります。「感情」「パワーバランス」「忖度」に代わる意思決定の軸はなんでしょうか? 対義語になりそうなものを持ってくれば解はでます。

「合理」「個人尊重」「空気読まない」という組織風土です。

「お局」が感情的に「誰が悪い」と犯人捜しをするところ、「合理」の風土は「問題はなぜ発生したのか?」を重視します。「個人尊重」の風土は少数意見であっても、個人の意見の違いを尊重します。「空気読まない」の風土は誰かに阿(おもね)り、口をつぐんだり、本音を伏せて同調することを良しとしません。

問題は「そんな理想を言っても、うちの「お局」は怒りだすだけで、手がつけられなくなります」ということだと思う。「お局」問題は風土の問題。そして風土の改革は経営トップが主導しなければ決して変わらない問題なのです。

再発防止に経営トップが関わる

過去に人間関係が問題で(「お局」が問題で)、思うような働きができなかった経験がある人は、次の職場探しでは「人間関係」が良いところをと探したのかもしれません。また、実際に面接等で職場へ行き、面接官や働く人の雰囲気を感じ取り判断をしたかもしれません。見分けるには、以下のような質問を面接官にしたらよいと思います。

「以前の職場で、感情的に判断をする人が幅を利かせていて、苦労した思いがあります。御社ではそのような方がいた時にどんな対処をしていますか?」

「問題となっている人間関係があれば、上司などが間に入って解決するようにします」という回答であれば、よほど成熟した(感情論がまかり通ることが常識としてありえない)組織でない限り「お局」は容認されている可能性があります。なぜなら「お局」問題は、風土の問題で、風土の問題は経営トップが主導して関与していなくてはならないからです。

ファミーユでは、創立当初から、この問題を重点課題と捉え、問題解決の指針を決め、各事業所にスローガンを掲示しています。それが「 Attack Process Engage People ~自己・他人を責めず 唯 プロセスを改善する」 です。これは、問題発生時に「感情」的に人を責めず、そのプロセスに着目すること、そして問題を引き起こした当事者だけでなく、周囲も同様に問題を起こさない様、仕組みとして再発防止をするフレームワークです。また、実際に苦情、ミス、ヒヤリハット等問題が発生した場合には、この「 Attack Process Engage People ~自己・他人を責めず 唯 プロセスを改善する」をベースにしたテンプレートで再発防止を行うことになっており、多くの具体的な問題が仕組みとして再発防止されています()。どのような考え方なのかは、動画にもまとめて、全社員の教育に使用しています。ファミーユは「お局」を永続的に生まない組織にするための仕組みを持っているのです。

「お局」は元来 責任感の強い人 正しい問題解決手法を身につけさせる

経営トップが関与しなければ「お局」問題はなくなりませんが、「お局」と称される人達は、元来 責任感が強く、直観力があり、仕事のできる人達でもあります。私は、この問題に向き合う際に「お局」を排除するのではなく、どうしようもなく「感情」的に問題を捉えてしまう言動・癖を修正してもらい「合理」的な思考ができる様になってほしいと考えました。そうやって正しい問題解決手法を身につけた「お局」は、責任感、直観力、合理を持ち合わせた優秀なマネジャー候補になると思っています。

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「お局」が居ないだけでなく、今後も生まない仕組みをもっているファミーユで働きませんか?




草野淳@ファミーユグループ代表 
東北大学法学部卒業。アマゾン・ミスミグループなど国内外の人事マネジャーを歴任。人事制度・評価制度の構築の他、独学でITを習得し、多くの人事関連の業務効率化を主導。関連書籍も執筆。2021年からファミーユヘルパーサービス名北の管理者兼サービス提供責任者。


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