セキュリティの理由でFAX廃止ができない!?
「河野太郎行政・規制改革担当相が、6月末までに省庁などでFAXの使用廃止の方針を示した」けど、失敗したと。理由は「各省庁から400件程度の反論が寄せられた」ということらしい。内容として記事に挙げられているのは、医療や警察での情報セキュリティだと。
FAX機へのアクセス制限しているのですか?
セキュリティを持ち出して、旧態然とした仕組みを変えようとしないというは、良くあることです。ただ、セキュリティに関する議論は、多くの場合、片手落ちです。FAXを使うとデータ流出しないのでしょうか? 事務所にあるFAXは、事務所内の不特定多数の人がアクセスできない様に制限されているのですか? 誰かが送られてきたFAXを抜き取ったり、処分したり、コピーしたりできない状況なのですか?決して紛失しない管理がされているものですか? FAXがセキュリティ上必要という理由は全く説得力がないと言わざるを得ないのです。
FAXに変わるクラウドサービス(メール・ファイルサーバー等)については、マイクロソフト・Google・アマゾンといった、いわゆるGAFAが提供していますが、今や国防省や金融機関でも利用されているものです。ベーシックな機能として、ユーザー別の権限設定も詳細に設定できます。そういったクラウドサービスよりも、フリースペースにおいているFAX機からでてくる紙の方がセキュリティ(プライバシー)上優れているとはいったいどんな理論なのか全くわかりません。
ペーパーレスの効果
FAXを無くして、メールや、データ共有を進めるという効果を再度整理してみましょう。要するにFAXを無くすことによるペーパーレスの効果を理解しなければ、FAXを廃止するべきだという結論にはならず、この議論を正しく進めるべきだと思っています。私が考えるペーパーレスの効果は以下の3つです。
情報の共有
紙運用をしていると、その実物またはコピーでしか状況を共有できません。FAX運用で起きている例で言えば、利用者様の基本情報(住所や電話番号など)をFAXでやり取りして、それをそのまま台帳に保管しているという運用です。この状態では、その情報を必要としている担当ヘルパーさんには情報が届きません。FAXを止めて、データで管理を始めれば、利用者様の基本情報を取得した途端に、その情報を必要とする職員へ共有をすることができるようになります。ファミーユの例では、FAXで来るステップ(利用者基本情報)は、PDFファイルでメール受信されるので、それをそのまま、担当ヘルパーさんもメンバーに入っているラインワークスのグループへ共有する運用にしています。台帳にステップ(利用者基本情報)が保管されることもありません。
リモートワークを可能にする
紙運用の障壁のもう一つは、紙がある場所に行かないとその情報をみれないというものです。これでは、リモートワークは実現できません。事務所を離れて仕事をしようにも、仕事に必要な情報が取得できないからです。FAXが紙で事務所から出てきたり、FAXを送るためには、事務所に行かなくてはならない状態では、決してリモートワークはできません。FAX運用を止めメール等での情報連携に変えていければ、場所を問わず仕事ができるようになります。ファミーユでは、コロナが始まるずっと以前からリモートワークができる環境を整えており、そのための紙運用回避を促進しています。(FAXもメールで受信され、PCからFAX送信ができる状態にしています)
コストが削減される
紙代・印字コストが一番に頭に浮かぶかもしれませんが、最も大きいのは保管コストかもしれません。台帳ファイルや資料ファイルを大量に作成し、保管するためのキャビネットや倉庫を所持しなくてはならなくなっていませんか? 台帳や資料ファイルは必要なものに限って紙保管することを徹底すれば、激減できます。ファミーユでは訪問介護で不要な紙をすべてデータ保管・管理に変えたところ、上下2段のキャビネットが8割不要になりました。
FAXは、送信コストもかかっています。FAX1枚送るコストは、5円~20円と試算されます。このコストどう考えますか? 仮に今の世の中で、メール1通送るのに、5円~20円かかるとなったら、メールおくりますか?
セキュリティ上のことを考慮したメールアカウントの導入を会社として進める場合、確かにコストが発生します。ただ、上記のようなコストを考え、また、前述の2つの効果を考えた場合、メールアカウント導入は、わずかなコストだと言わざるを得ないと思うのです。リモートワークができずに、事務所にくる人の労働時間、移動コストだけがなくなる効果は一人当たりでも、月額数千円~数万円なのではないでしょうか?
事務所に紙があったら異常
ペーパーレスの効果を認識し、深く理解をしていくと、事務所に紙がある状態が「異常」という認識になっていきます。皆がいない事務所で複合機やデスクの上に紙がある状態は「異常」なのです。だれかに不要な情報が漏洩している可能性があり、必要としている人への情報の共有が進まず、リモートワークが阻害され、コストが増えている状態なのです。ファミーユでは「事務所に紙(・現金)があったら異常」を合言葉にして、事務所5Sをすすめています。
FAXやめませんか? メールにしませんか?
自社内ではFAXは一切不要でも、FAXを止められない最も大きな理由がなにかと言われると、取引先、行政とのやり取りで必要だからということになってしまいます。ファミーユでもその理由一つで、FAXを運用し続けています。これは、地域・ビジネス・行政を巻き込んで、みんなで取り組む必要があることなのです。 メリットはあきらかです。デメリットはほとんどありません。 改めて言ってみます。
FAXやめませんか?
メールにしませんか?
行政(国)は、FAXに重税を掛けたら良い
FAX廃止が進まない「反論」は体制を変えたくないだけと断言できます。行政(国)は、猶予期間を以って、まずは省庁の許認可・連絡に関わるFAXを禁止することだ(例:申請書にFAX欄をやめてメールアドレス欄を入れる)と思う。そのうえで、FAX機やFAX送受信料に重税を掛けたら良いと思うのですよね。