DXの成果を『何人減らせたか』だけで測ると、現場は豊かにならない。減らせた残業、増やせた研修、守れた休憩、改善できた給与まで行き先を設計して初めて、生産性向上は処遇改善になる。
2026年、国も「生産性向上」と「処遇改善」を一つの流れに置いた
厚生労働省は、2026年6月から介護職員等処遇改善加算を拡充し、生産性向上などの取組と上位加算の取得を結びつけています。処遇改善を賃金配分だけの話にせず、職場環境や業務の変え方と合わせて考える方向が、より明確になりました。
同省の『介護現場における生産性向上・職場環境改善の継続的な取組』でも、業務効率化で生まれた時間を、残業削減、有給休暇の取得向上、教育・研修、職員への投資、直接的な介護へ充てることで、ケアの質を高める考え方が示されています。
ここには重要な順序があります。テクノロジーを導入する。時間を生み出す。その時間を職員とケアへ戻す。単にデジタル化するだけでも、加算を取得するだけでも、最後の『戻す』まで行かなければ働き方は変わりません。
効率化は、放っておくと「仕事を詰め込む力」にもなる
記録が10分短くなったとき、その10分をどう扱うかで会社の姿勢が表れます。すぐ次の仕事を詰め込めば、売上は増えるかもしれません。しかし、職員の疲労も、学ぶ時間の不足も、相談できない状態も変わりません。
DXは、現場を楽にする道具にも、さらに速く働かせる道具にもなります。どちらになるかは技術ではなく、経営判断です。
訪問介護では、求人票の時給だけを見ても実際の処遇は分かりません。移動、記録、連絡、待機、会議など、サービスの周囲にある時間がどう扱われるか。収入を増やすために長時間働くことが前提になっていないか。急な変更を個人の善意で吸収していないか。表面上の時給が高くても、見えない無給時間が多ければ、本質的な処遇改善とは言えません。
高い処遇は、長く働かせることではなく、同じ時間の価値を上げてつくる
介護や障害福祉は公定価格の事業です。物価や民間賃金が上がっても、サービス単価を会社の判断だけで変えることはできません。報酬改定や補助を待つことも必要ですが、それだけに依存すれば、継続的な賃上げは難しくなります。
だからファミーユは、採用、シフト、記録、連絡、書類、管理を仕組み化し、組織が大きくなっても一人ひとりの時間を食い潰さずに生産性を上げることを重視しています。利益を出すために勤務時間を伸ばすのではなく、不要な仕事を減らし、同じ時間から生まれる価値を高める。その果実を給与と働きやすさへ戻す構造です。
2026年1月には、継続してきたDX・業務改革の成果を背景に、訪問介護職員の時給改定と、役職者・ケアマネジャーの昇給を実施しました。これは一度の改定で完成する話ではありません。業務が変われば、削減できた時間と費用を測り、その一部を継続的に人へ戻せるかを考え続ける必要があります。
「還元」を言葉で終わらせないための四つの指標
- 見えない労働時間を測る。 訪問時間だけでなく、移動、記録、連絡、差し戻し、情報を探す時間を把握します。
- 削減時間の行き先を先に決める。 新しい仕組みを入れる前に、残業削減、休憩、研修、直接支援、給与原資のどこへ戻すかを定めます。
- 売上と同時に、働き方の指標を見る。 一人当たりのサービス時間だけでなく、残業、有給取得、離職、事故、記録遅延、相談への応答速度を追います。
- 処遇を「月額」だけで見ない。 基本給や時給に加え、無給時間の有無、勤務の予測可能性、教育機会、急な変更を支える体制まで含めて改善します。
結論
介護現場の生産性向上は、人を減らすことが目的ではありません。限られた人材でサービスの質を守りながら、働く人が長く専門性を発揮できる状態をつくることです。
制度による処遇改善は重要です。しかし、加算を受け取ったときだけ給与を上げる会社では、制度が変わるたびに処遇も揺れます。自社の業務を継続的に変え、生まれた時間と利益を人へ戻せる会社は、制度の後押しをより有効に使えます。
DXの成功を、導入したシステムの数で数えない。職員の一日から何が消え、その代わりに何が増えたかで数える。ファミーユは、業務改革の成果を職員の給与、時間、学び、そして利用者様へのより良い支援へ返していくことを目指します。
現在の募集職種と勤務条件は、採用ページからご確認ください。
外部参考情報
1970年USAメリーランド州生まれ、仙台育ち。東北大学法学部卒業。アイフル、S×L、ミスミグループ、Amazonなどで20年以上、人事・組織改革に従事。制度設計にとどまらず、業務を仕組み化・標準化し、組織全体の生産性を高めてきた。2021年より合同会社施恩(ファミーユヘルパーサービス愛知)の運営に参画。介護業界でDXや自社システム、AI活用、業務改革を推進。持続的に成長できる組織づくりに取り組んでいる。趣味は料理とアニメ鑑賞。イタリアンやスパイス料理づくりを楽しみ、音楽はPrinceと古内東子を愛聴しています。仕事でもプライベートでも、新しい発想や優れた表現に触れることを大切にしています
